パンケーキ【難波麻人】
みんなパンケーキが大好きだ。
特に女子なんか、男子の家系ラーメンくらいパンケーキが大好きで、つまり男子は女子のパンケーキぐらい家系ラーメンが大好きなのだ。
一時のブームが過ぎた今でも、有名パンケーキ屋には行列が出来ている。
何故人はそこまでパンケーキが大好きなのか?ネットのコラムなどを読んでみると、
「女子は可愛いくてお洒落な空間が好きだから。」
だそうであるが、そんな教科書通りの考察ならば、わざわざコラムに載せる程でもないだろうと思ってしまう。
それに、お洒落な空間+わざわざ通う目的=人気、ならパンケーキでなくてもいい筈である。
パンケーキだけが爆発的なブームになり、更に今なお勢いが留まらないのにはもっと他に理由がある。
それは、子供の頃食べたホットケーキへの期待外れ感にあるのではないだろうか。
幼い頃、家庭で気軽に食べられるホットケーキへの憧れを誰もが持っていた。
ホットケーキミックスのパッケージ写真はどれもふっくらと焼きあがり美味しそうで、母親がホットケーキを焼くキッチンからは、うっとりする程甘い香りが漂ってくる。
しかし夢はいつもそこで覚めて、母親がテーブルに運んできた現実のホットケーキは、パッケージ写真とは比べ物にならないくらい平べったくて、口に入れても想像していたフワフワのとろけるような食感もなく、パンを食べてるような感覚になる。
こんなの僕が思い描いていたホットケーキじゃない…
でもその想いは、そこからいくら作って貰っても、友達の家で食べても、大人になって自分で少し高いホテルのホットケーキミックスを買っても満たされる事はなかった。
そんな僕等は、知らず知らず潜在的に、ホットケーキへの欲求やフラトテレーションを募らせて育っていたのである。
そしてその欲求の捌け口として、抑圧され続けたフラストレーションを爆発させる場所として、パンケーキ屋は瞬くまに日本を席巻したのだ。
この店行けば、あの止まったままの時間を…置き去りにしたままの感覚を…ぽっかりあいた隙間…全てを取り戻せるかも!
そうこれだよ!この満たされた幸福感だよ!これがあのパッケージ写真から想い描いていた味なんだよ!
店の中からも、外に出来た行列からも、そんな魂の叫びが聞こえてきそうだ。
これこそが、パンケーキ屋未だ衰えぬ人気の理由なのである。。
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