夜【難波麻人】
夜は全ての形をはっきりさせてくれる。
きっと、日中の喧騒やそこから発せられる熱気が、家も車も公園も、そして僕や僕自身が抱える不安や悩みさえ、全ての輪郭をぼやけさせてしまっているのだ。
でも夜中に散歩していると、そこには冷たく張り詰めた空気だけが僕を覆って存在していて、昼間のそれよりもずっと澄んで透明に感じられる。
さらに集中すると、その澄んだ空気と自分が一つになって、空気が触れたもの全ての形や重さ、質感までが僕にも把握出来るような感覚に陥るのだ。
きっとここまで来ればカメハメハ波を出すまでもう一押しだね。
だから夜の散歩は好きなんだけど、こう物騒な世の中になってくると男の僕でも危険を感じるようになる。
気づけば後ろに足音が聞こえてきて、ずっと後ろを付いてきてこのままじゃ刺されると汗だくになって振り返ると、露出度の高い格好をした金髪ギャルだった事が結構ある。
更に言えばその金髪ギャルに滅多刺しにされてもおかしくない時代なのである。
だから夜の空気に触れるのは、良いことも悪いことも、深く考えたり自分と向き合う為には最適なんだけど、22時以降の外出、散歩に関しては基本的に禁止とします。
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