花見【難波麻人】
僕にとってお花見とは焼肉みたいなものだ。
僕は肉が食べれなくて焼肉に行ってもあまり頼める品がないのだが、七輪や網を囲みながら、煙越しに浮かぶみんなの笑顔を眺めるのが好きで、何かあれば焼肉行こうとなってしまう。
お花見も同じで、いくつもの区切られたブルーシートの上で窮屈そうにしている群集は苦手だし、ぬるい缶ビールは飲めない。
どんなに酔っ払って乱痴気騒ぎをしてる人間も、ブルーシートで囲ったテリトリーからは一歩もはみ出さないし、
ブルーシートの上に直接座る格好はお気に入りのパンツの膝の部分が伸びそうで嫌だし、
わざわざ避けて置いたジャケットは千鳥足で便所に行く後輩が踏んで行くし…、
けれどあの雰囲気は大好きなのだ。
自分があの楽しそうな空間に馴染んでいる事が幸せというか、きっと端から見ればこんな僕でも幸せそうに映っているんだろうと思うと、少しだけ安心する自分がいる。
せめて他人から見たら幸せに映る自分でありたいと、道化を演じているのかも知れない。
僕とお花見に行った事がある人は、あの笑顔の奥にそんな歪な考えを持っているとは知らなかったろうし、そんな面倒くさい奴とは二度と一緒にお花見に行きたくないと思うだろう。
だからもっとポップに言うと、みんなが映画やドラマの世界に憧れるように、その世界に少しでも浸れたらとロケ地を巡って写真を撮るような感覚で、僕は焼肉やお花見に足を運んでいるのだ。
今年のお花見は、バランスボールの上でのビール瓶ジャグリングに挑戦しよう。
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